stray sheep

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remote

 街全体に響く大きな音で、児童会の子供が「もう帰りましょう」と放送をする時間。夏の夕暮れ時のオレンジは沈むときまで子供たちの肌を静かに焼いて、元気いっぱいの小麦色にする。
 ジャングルジムの上で、ポニーテールの少女がひとつため息をついた。
「もう、時間だね」
 遠くに沈む夕焼けを見つめながら、唇をぎゅっと強く結んだ。
「うん。もうさよならの時間だ」
 ジャングルジムの下で二人の男の子が俯き、地面の影を見つめる。
 一人の男の子が小さな声で隣の男の子に声をかけた。その声は小さいけれど力強く、どんな思いが込められているのかよくわかる。
「ぼく、絶対帰ってくるから。だからそれまでオトヤが絶対守るんだぞ」
「うん。僕絶対守るよ。マー君が帰ってくるまで、約束」
「ああ。破ったら承知ないからな」
「何の話?」
「ううん。なんでもないよ。僕、必ず帰ってくるからね。帰ってきたら結婚しようね」
「うん!」
 それは夕焼けが見送る、とても小さな恋の記憶だった・・・・・・・・・。
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