結局ニーナとゴローは一日中、優奈とダサオの観察をしていたんだけど、つまんないことこの上ない。
【ダサオメモ】
音楽科特進クラス三年。専行はピアノ。
授業態度も成績もすこぶる優秀で先生からの人望も厚いっぽい。
メガネ男子。
寝癖は、なし。
優奈の席から見ると、前の前の隣。授業中優奈は三分に一度の割合でちら見をしていた。
なあんだ、なんかつまんなーい。優奈がいってる「恋愛」ってただのクラスメイトじゃんか。
ひらひらとメモを片手に歩いていたら、鼻先をくすぐる甘い香りに引き寄せられた。
「優奈。クッキー焼いたの!?」
「ええ。久しぶりに作ったのだけれど、感想を聞かせてね」
優奈の作るハーブのクッキーは魔女の力をアップさせるのにとっても有効だって、パパが言ってた。
「うん♪」
一つ二つ口の放り込むと、口の中に広がるミントやジンジャーの香りが心地よかった。やっぱり優奈の作るお菓子はふわふわって幸せな気分にさせてくれる!!
「あれ? 優奈、いつものアップルミント味がないよぉ?」
庭にたくさん生えてるハーブの中でも、ニーナのお気に入りはアップルミントの葉だ。あれは本当にいい匂いで紅茶にしてもクッキーに混ぜても幸せな気持ちでいっぱいになれる。・・・・・・・・・のに、今日のクッキーの中にはそれがない。
「今日はカモミールの紅茶も淹れたのよ」
「え? 優奈ぁ? アップルミントのクッキーは・・・・・・」
優奈が返事もしないでそそくさとキッチンへ戻っていく。
―――――なにあれー。
普段はまったくもって鈍感なニーナだけど、このときは何かが違ってた。優奈を追いかけていくと、そこには・・・・・・。
庭一面に茂っている優奈のアップルミントの葉が、すべてアリエナイ色に色づいている。紫やらピンクやら、挙句銀色にまでなっているのだから突っ込まずにはいられない。
「ゆゆゆ、優奈ぁ?! ミントがすごいことになってるよぉ!?」
ニーナの大声に反応するように、キッチンの奥でドンガラガッシャンと酷い音が鳴り響いた。ニーナは慌ててキッチンを覗いたけれど、一度は落ちて散らばったはずの調理器具は、液体も含めて優奈の周りで宙に浮かんでいる。
「ちょ、どうしたの? 優奈」
「な、なんでもないわ」
「なんでもないって」
言うような状況に見えないんだけど。
ニーナは口が開いてぽかんとした顔のまま動けなかった。と、そこへ現れたのは青いスライムのゴロー。またも猫の姿をとって現れたかと思うと、ニーナに向かって体当たりしてきた。もう、毎度毎度いたいっての! ゴローはピンポイントにペンダントの杓杖へとアタックをかまして人型になると、優奈の周りに浮かんでいるポットやカップや紅茶自体をどうにかあるべき場所へと収めていった。ほんと、こういうのは得意みたい。
やがてすべての器具を処理すると、ゴローは優奈の耳元に何か囁き、それに反応して優奈が現実へと帰還する。
やっぱ、愛の力は違うのかねぇ。
「ご、ごめんねぇ、ニーナ。肥料を間違えちゃったみたいなのよ、あはは、はは・・・・・・・」
「そう、なんだ?」
絶対違うし。そんなわけあるかってーの。
ッて思ったけど、ここはとりあえず素直に頷いといた。だって優奈の顔真っ赤に茹で上がったタコみたいなんだもん。
「えっと、ニーナ。紅茶のみましょう?」
優奈は精一杯の笑顔を作ると、カモミールの紅茶をトレイに載せてテラスへと運んできた。
ちょー、あやしいんですけど・・・・・・。
このときニーナはピンと来たんだ。普段はまったくもって鈍感だけど、優奈のこの動揺ッぷりは絶対ダサオが関わってるんだって気がついた。
ニーナの傍に帰ってきたゴローの首根っこを引っつかんでおでこをくっつける。
「さっき優奈に何言ったの?」
「な、何でもありませんよ。ほんと、大したことじゃないです」
「うそつけ。絶対ダサオに関することでしょう? ニーナだってそれくらい判るんだから」
おでこをくっつけたまま精一杯の凄みを利かせるけど、ゴローはにこって笑ってニーナの頭をぐりぐり撫で回す。
「気にしすぎですよ。優奈様も肥料の配分を間違えることだってあるってだけです」
「優奈はそんなバカやらないもん」
「ああ、ニーナはと違うってコトですよね」
そういってゴローはまたにっこり笑った。
「・・・・・・・・・・・・」
スライムのくせにゴローはめちゃくちゃ生意気だと思うよ、パパ。
「気付いたらその人のことばかり考えてしまって、何もかも手につかなくなるって言うのが、恋の副作用なんですよ、ニーナ」
「恋の副作用・・・・・・?」
ニーナの頭にハテナマークが浮かんだ瞬間、ゴローは簡単にニーナの手を引き剥がして優奈の所へと戻っていった。どうやらお茶の手伝いをするみたいだけど、ニーナの質問には結局答えてないじゃん。
「ちょっとゴロー・・・・・・」
文句を言おうとしたけれど、タイミングよく運ばれてきた御菓子と紅茶の香りに、ニーナの意識は一瞬でお茶会モードに切り替わってしまっていた。
結局恋の副作用について思い出したのは翌日また忍び込んだ高等部でダサオの姿を見つけてからだった。
「あちゃ〜、優奈のアップルミント事件解決するの忘れてたし・・・・・・」
ニーナが額に手をあてベンチで一人反省していると、聞き覚えのある優しいトーンで声をかけられた。
「あれ、どうしたの? もしかしてまた道に迷っちゃった?」
「だ、ま、雅生君!」
思わずダサオって言っちゃいそうだった口をどうにか抑えて立ち上がった。ダサオは相変わらずのきちんとした格好で軽く首をかしげてニーナを見た。
「あれ、僕名前教えたんだっけ?」
「あ、あわわ、ああ、あの。昨日はありがとうございましたっ」
「いいえ、大したことはしてないよ。それで・・・・・・」
「に、ニーナです」
あ、やばい。本名言っちゃった!
名前知ってたこと突っ込まれたくなくて無理やり話を繋げてみたけど、咄嗟のことで偽名使うまもなく終了。優奈に話されたりしたら完璧アウトだよぉ〜。
「ニーナちゃんか。こんにちは。今日はどうしたの?」
「え、えと、散歩です! 早くこの学園に慣れたいなって思って」
このテンパリの中よく出てきたよ、ニーナえらい。表彰してあげる。
「そうなんだ。いつから転入するの?」
「あ、えっと、まだ決まってないんです。その、て、手続きとか! いろいろ大変で!!」
手続きより今の状況が大変なんだけど!
なんて1人脳内突っ込みしてみるけど、ニーナが思うよりダサオは気にしてないみたい。
「そっか。編入は大変だよね。ニーナちゃんは何を専行しているの?」
「せ、専行、ですか?」
やばいよ、楽器なんて中等部じゃブラバンの演奏を遠くから見たことしかないってのに。
思わず視線が泳ぐ。ちらりと見たダサオの表情がニーナの答えを待っていて、ニーナはまたもテンパッちゃッた。
「ふ、フルートです」
「へえ、フルートなんだ」
ひええ、何でよりによって優奈の専行しているフルートとか言っちゃうのかなぁ、ニーナのばかぁ。
「僕のクラスにもフルートの上手な女の子が居るんだよ。一緒にセッションできたらいいね」
激しく後悔するニーナの横で、ダサオがふわりと笑った。
あ・・・・・・・・・・・・。
その笑顔は、どこかで見たことのある表情で、ニーナはなぜか心臓の辺りがぎゅってなるのを感じた。
「そ、その人は、雅生君の彼女さんなんですか?」
きっと優奈のコトをいっているんだ。ダサオは優奈のコトをどう思ってるのか、今ならきっと聞き出せる。
ニーナは心臓の違和感をほったらかしにして、好奇心にまかせて聞いてみた。
「か、彼女だなんて。僕には勿体無いひとだよ。とても大切なクラスメイトなんだ。彼女の演奏には優しい心がつまってるみたいで、とてもきれいな旋律なんだよ」
「クラスメイト? ただの友達ってコトですか? 彼女のこと好きじゃないんですか?」
「すすす、すき、だなんて、そんな。僕には恐れ多いよ。彼女は才能もあるし、音楽科でもとても好かれている人だし」
ダサオの顔がみるみる赤くなったかと思うと、その後また普通に戻った。
スキが恐れ多いってなんだ?
「じゃあスキじゃないんだ?」
「そんなわけじゃ・・・・・・。でも、憧れてはいるよ」
ダサオの表情はよく判らない。スキとか憧れとか恐れ多いとか意味がわかんない。
ニーナは優奈がダイスキだけど恐れ多くなんかないよ?
いまいちわかんないなぁ。
そのとき予鈴のチャイムが鳴った。なんだかんだ立ち話になっていたダサオとニーナは目を合わせて苦笑いした。
「もう行かなくちゃね。ニーナちゃんも気をつけて散歩してね」
「うん。ありがとう。またね」
ニーナは消えていく後姿を見送ってまたベンチに腰を落とした。
「わけわかんないや」
その後も結局ニーナは1人で校舎の中をぶらぶらしてたけど、どうにも1人じゃつまんなかった。っていうか、いっつも引っ付いてるくせにどこ行ったのよ。
あ。ママのおにーちゃんに呼ばれて出かけてるんだっけ。
「ったく、バカスライムめ」
ニーナは中庭の木陰で足を伸ばして空を見上げた。お空には白い雲と青い空が広がっていてきれいに羽ばたく鳥なんかもたくさん飛んでた。
あー。確かあの鳥はパパが美味しいっていってたような気がする。
空を飛んでる白い鳥がフライドチキンにみえた。
ぐるる・・・おなかすいたかも。
ニーナがボーっと空を見上げていると、くすくす笑うひとの声が聞こえた。
「なんだ?」
ベンチにだらぁっと寄りかかっている体勢はそのままに、顔だけカクンと声のするほうへと向いてみた。そうしたらその先に見えたのはなんだかとてもガラの悪い、いわゆる頭の軽そうな数人の男の子がニヤニヤしながらニーナのほうへと歩いてきていた。
「どーっおしたの? 君も授業サボっちゃってる感じ? だったらさぁ、俺らと遊びに行こうよ」
親戚のおばちゃんよりも黄色い髪の男の子が目の前で止まった。
なんか、この人パパが一番嫌いそう。
「あれあれぇ? 声が出ないのかな?」
「知ってるかい? 無言は肯定って言うんだってさー」
校庭?
あーあ。こういうときのためのゴローなのに、つかえないなぁ。
ニーナがぼけぇっと考えてたら、無視してるのかよって、一人が怒り出した。
「あ、ごめんなさい。ニーナ、あんまり聞いてなかった」
めんどくさいなぁって思ってたから思ったこと口に出してなかったんだ。いけないいけない。
「まあいいや。俺たち暇だからさ、可愛い女の子と遊びたいわけ。君も暇なんだろ? 一緒にイイトコ行こうぜ♪」
「イイトコって?」
「イイトコはイイトコだよ〜。一緒に楽しいことしようぜ」
「ん〜〜〜〜、めんどくさいからやだ。これでもニーナ暇じゃないの」
ダサオと優奈のこと見張ってなきゃ。
ちゃんと断ったつもりなのに、頭の軽そうな人たち=金髪だから『きんぱっちゃんず』ね。はニーナの隣に無理やり座った。
「つれないこというなよぉ。ほら、一緒に気持ちいことしよって〜」
「ちょっと、なにすんのよ」
きんぱっちゃんずのリーダーはニーナの足に手を伸ばした。うげぇ、気持ち悪い。鳥肌が立って、その手を払いのけたけど、そんなニーナの態度も気にせず、他の男のたちも傍に寄ってきた。あっという間にニーナの周りを取り囲むようにきんぱっちゃんずが立ち塞がった。
やだ、ナニコレ。こういう時って何の呪文が効くんだっけ?
ニーナは急に周りが見えなくなって怖くなった。いつもなら大抵のピンチは魔法でナントカできるって思ってたのに、なんでだろう、急に頭が真っ白になった。やだ助けてよ。バカスライム! ゴロー!!
必死に呪文を思い出そうとするけどちっとも集中できない。おかしいな、声も出ない。リーダーの手がニーナの太ももに触れる。両肩も他の男の子に抑えられた。やだよ! 助けて・・・・・・!!
「先生! こっちです!!」
思わず目を瞑った、その瞬間、聞き覚えのある声がニーナの耳に届いた。
それは授業中のはずのダサオの声。きんぱっちゃんずはその声と『先生』って言うフレーズに驚いて、蜘蛛の子散らすように逃げていく。
た、たすかった・・・・・・。
「大丈夫? ニーナちゃん」
ダサオがニーナの傍に来て顔を覗き込んできた。心配してくれるその瞳に、思わず下を向いちゃった。だって、なんでかわかんないけど、まっすぐ見つめ返せなかったんだもん。
だけど下を向いたとき、ダサオが靴も履き替えないで走ってきてくれたんだってことに気がついた。しかもダサオの後を追って先生が来る気配もない。もしかして・・・。
「ニーナのこと、助けるために駆けつけてくれたの?」
「喧嘩が出来たらかっこよかったんだけどね、僕そういうのダメだから。情けないけど虎の威を借りてみたんだ」
そういってダサオは・・・・・・ううん、雅生君は笑った。だけど違うよね、喧嘩して助けてくれなくても、虎の威を借りたっていい。ニーナのこと助けるために上履きのまま飛び出してきてくれたことが嬉しいんだ。
嬉しい。
そう、嬉しかった。
「ニーナ、ニーナ! 見てくださいっ! 優奈様に教えてもらったんですよ!」
家に着くなり、ゴローは人型のまま玄関へ飛び出してきた。手にはバスケットに入ったたくさんのクッキー。
「へえ、よかったね」
「あれ? ニーナ?」
「・・・・・・お夕飯になったら呼んで」
「え、に、ニーナ?」
このときニーナは、ゴローの声も殆ど聞いてなかった。
頭の中はずっとあの瞬間をリピートしている状態。ニーナのピンチに駆けつけてくれた雅生君の姿。そうだよね、雅生君は最初から優しかった。迷子だなんて適当な言い訳を信じて案内してくれて、校内で見かけたらそれだけで声をかけてくれて・・・。
雅生君、今何してるのかなぁ?
コンコンコン。
「ニーナ? ご飯の時間ですよ。今日は優奈様特製のチキンのトマト煮込みとパエリアですよー。ニーナ?」
「うん。判った・・・・・・」
優奈様、か。
雅生君は優奈の手作りお菓子食べたことあるのかなぁ?
調理実習とかでご飯食べたことあるのかもしれないよね・・・・・・・・・。
いいなぁ、優奈は。
なんてことをぼんやり考えていたら、またゴローが部屋のドアを叩いた。
「ニーナ、具合でも悪いんですか? ご飯おかゆがよかったですか?」
ご飯・・・・・・雅生君も今お夕飯食べてるのかな?
「ニーナ?」
「ごめん、やっぱり今日はいらない。このまま寝る」
なんか、お腹すかないや。
「え、ちょ、ニーナ?」
ゴローが慌ててドアを叩く。
「具合悪いんですか? あけますよ? あけますからね?」
なんか、うるさいなぁ。ゴロー。超めんどくさい。
ニーナだって1人で考えたい時だってあるのに、邪魔しないでよね。とか思ってみても、ゴローは結局部屋に入ってくる。
「大丈夫ですか? 熱は? 吐き気は?」
「なんでもないよぉ。1人でいたいだけ。ニーナに構ってないで優奈と二人で楽しくご飯食べてなよ。優奈だって1人でご飯じゃつまんないでしょ? ニーナのことは放っておいていいから」
ラブラブしてなよ。
布団かぶってればよかったのに、ベッドにうつぶせになってただけのニーナはうっとおしいほど絡んでくるゴローの質問攻めに、だんだん苛々してきた。
「1人でいたいって、どうしたんですか? お腹痛いんですか? 薬持ってきましょうか? やっぱりおかゆ作って・・・・・・」
「もう! ゴローうるさいっ。すこしは雅生君見習って大人になってよ!」
思わずそう叫んでゴローを蹴っ飛ばしてみた。不意打ちくらってゴローは二回転。壁にぶつかる手前でなんとか止まる。だけど。
「ニーナ・・・・・・」
ゴローは悲しそうに眉根を下げてる。なに? ニーナなんか変なこと言った?
「な、なによ」
「ニーナ、今日何かあったんですか? 俺のいない間に、彼との距離を縮めてしまうような、何か・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「・・・・・・あったんですね?」
見たことない瞳で見つめられて、ドキッとした。脳裏に浮かぶのは額に汗して駆けつけてくれた雅生君のこと。
「な、なにもないよっ!」
慌てて否定したけど、ゴローはもっと険しい顔になった。
「ニーナ。彼を好きになっちゃったんですか?」
は?
「な、なにいってんの? スキにって・・・・・・・・・」
好きって、好きって、なにいってんの・・・・・・・・・。そんなわけ・・・・・・。
あ、あれ? 思わず包んだほっぺたが熱い。もしかして、いまニーナってば顔が赤いってやつ?!
「どうしてですか? 今日俺のいない間に一体なにがあったんですか?」
ゴローがニーナの腕を掴んで瞳の奥を探るみたいに見つめてくる。や、やだ。なんか怖いよ。
「な、何にもないってば」
「嘘です。なにがあったんですか!?」
やだやだやだ。こわいよっ!
「ニーナ!」
「ゴ、ゴローには関係ないでしょ! もうどっかいってよ!」
ニーナは杓丈を投げつけてゴローを睨んだ。ゴローはどんどん人型から形を変えていく。
「ニーナ、本当に彼が好きなんですか?」
スキ・・・・・・?
スキ・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
『気付いたらその人のことばかり考えてしまって、何もかも手につかなくなるって言うのが、恋の副作用なんですよ。』
ふいに昨日のゴローの言葉が甦った。
気付いたらその人のことばかり・・・・・・・・・。
「嘘・・・・・・」
ニーナ、雅生君のこと好きになっちゃったの?!
「ニーナ・・・・・・」
小さく呟いたゴローの、悲しそうな声と素直な落胆が胸に痛かったけど、ニーナは恋だと気づいちゃったんだ。ううんゴローが気付かせたんだもん。
ニーナは悪くないよ。
優奈と同じ人を好きになったけど・・・。ニーナ、悪くないよ。
そうだよ、もしニーナと雅生君がうまくいったら、ゴローにだって優奈とうまくいく可能性が出て来るんだもん。なによ、悪い事ばかりじゃないじゃない。
ゴローがいつの間に出て行ったのが判らなかったけど、誰かを傷つけた不快感をいいように変換してニーナはいつもの調子に戻った。
「恋、しちゃったんだ、ニーナ」
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